危険物と有害物:労働安全衛生法による対象物と取り扱い

危険物と有害物の定義

危険物の定義と具体例

労働安全衛生法における「危険物」は、爆発性、発火性、酸化性、引火性の物質及び可燃性ガスを指します。これらは労働安全衛生法施行令別表第1に掲げられており、その取り扱い等は労働安全衛生規則で定められています。

  • 爆発性のもの:ニトログリコールやニトログリセリンなどの爆発性の硝酸エステル類
  • 発火性のもの:金属のリチウム、カリウム、ナトリウムなど
  • 酸化性のもの:塩素酸カリウムや塩素酸ナトリウムなどの塩素酸塩類
  • 引火性のもの:エチルエーテルやガソリンなど

有害物の定義と具体的

労働安全衛生法における「有害物」は、労働者の健康に影響を与えるおそれのあるものを指します。

具体的な業務の例としては、

  • 「鉛業務」
  • 「粉じん作業」
  • 「有機溶剤業務」
  • 「特定化学物質を製造又は取り扱う業務」

などがあります。これらの業務は、それぞれ特定の物質や環境に関連しており、労働者の健康に影響を及ぼす可能性があります。

製造等禁止物質と製造許可物質

製造等禁止物質の定義と取り扱い

労働安全衛生法の「製造等禁止物質」は、労働者に重度の健康障害を生じる可能性がある物質で、政令で定められています。

具体的には、黄リンマッチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤などが該当します。これらの物質は、製造、輸入、譲渡、提供、または使用が禁止されています。

ただし、試験研究のために製造、輸入、または使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りではありません。

製造許可物質の定義と取り扱い

「製造許可物質」は、労働安全衛生法において、その製造にはあらかじめ厚生労働省の許可が必要とされている物質を指します。具体的にはベクロルベンジジンやそれを含有する製剤など、労働者に重度の健康障害を周ずる恐れのあるものです。

危険物と有害物の取り扱いに関する法的責任

事業者の法的責任

表示対象物

労働安全衛生法第57条第1項に基づき、特定の物質(「表示対象物」と呼ばれます)の譲渡または提供の際には、容器または包装にその名称等の表示が義務付けられています。表示対象物とは、労働者の健康に影響を及ぼす可能性のある物質で、その取り扱いには特別な注意が必要です。

表示対象物のリストは、厚生労働省のウェブサイトや地方労働局のウェブサイトで確認できます。これらの物質は、労働者の健康を保護し、労働環境を安全に保つための重要な規制の一部です。

職場のあんぜんサイト:化学物質:表示・通知対象物質(ラベル表示・SDS交付義務対象673物質)の一覧・検索 (mhlw.go.jp)

表示対象物の取り扱いには、適切な安全対策と健康管理が必要となります。これらの対策は、労働者の健康を保護し、労働環境を安全に保つためのものです。

通知対象物

労働安全衛生法第57条の二では、一定の化学物質(通知対象物)を譲渡または提供する者は、その物質の名称や成分、人体に及ぼす作用などの情報を相手方に通知しなければならないとされています。この通知には、安全データシート(SDS)が使用されます。

ただし、一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、または提供する場合については、この限りではありません。

表示対象物および通知対象物について事業者が行う調査

労働安全衛生法では、事業者が取り扱う化学物質について、その危険性や有害性を評価し、適切な対策を講じることが求められています。具体的には、以下のような調査が義務付けられています。

  1. ラベル表示対象物についての調査: 労働安全衛生法第57条で譲渡・提供時のラベル表示が義務付けられている化学物質(ラベル表示対象物)について、譲渡・提供時以外も、ラベル表示・文書の交付その他の方法で、内容物の名称やその危険性・有害性情報を伝達しなければなりません。
  2. リスクアセスメントの実施: 労働安全衛生法第57条の3でリスクアセスメントの実施が義務付けられています。リスクアセスメントとは、化学物質の危険性や有害性を評価し、それに基づいて適切な対策を講じることを指します。

終わりに

化学物質の取り扱いにおける危険性や有害性の評価と対策は、労働者の安全と健康を確保するために極めて重要です。労働安全衛生法とその施行規則は、事業者に対してこれらの義務を明確に規定しています。

これらの法律と規則を遵守し、労働環境の改善に努めることで、より安全で健康的な職場を実現することができます。それは全ての労働者の権利であり、また事業者の責任でもあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました