災害時の安心、給付基礎日額のメカニズムを理解しよう

はじめに

労働者災害補償保険法は、労働者が職業上の事由で傷病した場合や、死亡した場合に、その労働者本人や遺族に対して給付を行う制度です。この制度は、労働者が安心して仕事に取り組むことができるようにするための重要な柱となっています。

その中でも、給付基礎日額は非常に重要な要素となります。いざというときにあなたはどれだけの補償が受けられるか分かりますか?

給付基礎日額とは

給付基礎日額とは、労働者が受けることができる給付金の計算基準となる金額のことを指します。

この金額は、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とされます。労働基準法上の賃金については以下の記事で詳しく紹介しています。

給付基礎日額の計算方法

給付基礎日額の算定基準

給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とされています。平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、負傷・死亡の原因である事故が発生した日または診断により疾病の発生が確定した日(「算定事由発生日」と呼ばれる)とします。

法律における平均賃金の算定方法およびその制約事項はつぎの通りです。

  1. 平均賃金の定義: 平均賃金は労働者に支払われた賃金の総額を、それが算定すべき事由の発生した日以前の三箇月間における総日数で除した金額と定義しています。
  2. 算定の制約: ただし、賃金が日数や時間によって算定される場合にはその100分の60、月や週によって算定される場合にはその全額、そしてこれらの合算額が制約として規定されています。
  3. 期間の起算: 賃金締切日がある場合、期間の起算は直前の賃金締切日からとされています。
  4. 特定の期間の控除: 特定の期間(業務上の負傷、療養、産前産後の休業、使用者の責めに帰すべき事由による休業、育児休業や介護休業、試用期間など)は、期間とその期間中の賃金を平均賃金から控除されます。
  5. 臨時支給と通貨以外の賃金の取り扱い: 臨時に支給された賃金や通貨以外のもので支給された賃金は、特定の範囲や条件を超える場合には平均賃金の算定から除外されます。
  6. 通貨以外の賃金の算入範囲: 賃金が通貨以外のもので支給される場合、その算入範囲や評価に関する事項は厚生労働省令で規定されます。
  7. 雇用期間による変動: 雇用期間が三箇月未満の者については、期間は雇用後の期間となります。
  8. 日日雇い入れられる者への適用: 日日雇い入れられる者については、その事業または職業について、厚生労働大臣が定める金額を平均賃金とします。
  9. 算定できない場合の規定: 平均賃金を上記の規定に基づいて算定できない場合には、厚生労働大臣が定めるところにより算定されます。

特例的な場合の給付基礎日額の算定

平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが不適当な場合は、厚生労働省令で定める基準に基づき政府が算定する額を給付基礎日額とします。

複数事業労働者に対する給付基礎日額の算定

複数の事業で働く労働者に関する特例があります。具体的には複数の事業による業務上の事由、二以上の事業の業務を要因とする事由、または通勤による負傷、疾病、障害、または死亡により、複数事業労働者やその遺族などに保険給付が行われる場合に算定されます。

給付基礎日額は、複数の事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算し、政府が厚生労働省令で定める基準に基づいて算定します。

給付基礎日額の特例

また、平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働省令で定める基準に基づいて算定された額が給付基礎日額となります。具体的には以下の通りです。

休業による負傷・療養の場合

期間中に業務外の事由による負傷または疾病の療養のために休業した労働者は、平均賃金が、休業期間を同法の第三項第一号で規定される期間(業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間)とみなして算定した平均賃金に満たない場合、その算定した平均賃金に相当する額が給付基礎日額となります。

じん肺または振動障害にかかった場合

じん肺または振動障害にかかり、粉じん作業等以外の作業に常時従事することとなった日を基準に算定した平均賃金が、その作業転換前における期間の平均賃金に満たない場合は、その平均賃金を給付基礎日額とする。

船員の場合

船員の賃金は基本給と変動給(船舶に乗り込むこと、船舶の航行区域、船積載物の種類によって変動がある賃金)があり、算定事由発生日以前3か月を算定期間とすると給付基礎日額を著しく変動してしまします。

そこで、そのような場合は、算定事由発生日以前1年間について算定することとした場合における平均賃金相当額を給付基礎日額とします。

その他の特例

平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが不適切な場合は、厚生労働省労働基準局長が基準に従って算定します。

自動変更対象額

自動変更対象額とは、労働者災害補償保険の給付基礎日額の最低保障額を指します。この額は、労働者が受けることができる給付金の計算基準となります。

労働者災害補償保険法施行規則第9条第1項によれば、自動変更対象額は原則として労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とされています。

しかし、被災時の事情により給付基礎日額が極端に低い場合を是正し、補償の実効性を確保するため、その最低保障額である自動変更対象額を定めることとしています。

自動変更対象額の変更

自動変更対象額は定期的に見直され、経済状況や物価の変動などに応じて調整されます。

4月1日から始まる年度の平均給与額が前年度を上回るか下回る場合、その上昇または低下した比率に応じて、翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更する必要があります。

自動変更対象額には5円未満の端数がある場合は切り捨て、5円以上10円未満の端数がある場合は10円に切り上げられます。

厚生労働大臣は、自動変更対象額を変更する場合、当該変更する年度の7月31日までに、変更された自動変更対象額を告示することが義務づけられています。

令和5年8月1日から適用される自動変更対象額は、4,020円(改定前3,970円)です。(令和5年7月28日厚生労働省告示第242号)

終わりに

労働者災害補償保険法は、職業上の事由で傷病や死亡が発生した際、労働者や遺族に支給を行う制度です。その中で給付基礎日額が極めて重要であり、平均賃金に基づく計算が行われます。

賃金の算定方法や特例的な場合における給付基礎日額の算定基準が明確に定められています。自動変更対象額も年度ごとに見直され、経済状況や物価変動に応じて調整されます。

これらの仕組みは、制度の公平性と安定性を確保するために欠かせません。

いざというときのために、自分の給付基礎日額を計算してみましょう。

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