【労働保険徴収法】労働保険徴収法 特別加入保険料

特別加入

労災保険の特別加入は、一定の条件を満たす事業主が自己に対して労災保険を適用する制度です。

特別加入には第一種から第三種まで種類があり、それぞれで対象や要件が異なります。

第一種特別加入保険料

第一種特別加入とは

第一種特別加入の要件となる業種および労働者の人数は以下の通りです。

業種労働者の人数
金融・保険・不動産・小売業50人以下
卸売・サービス業100人以下
その他の事業300人以下

第一種特別加入保険料の計算方法

第一種特別加入保険料の年間保険料は、「給付基礎日額×365」から算出される保険料算定基礎額に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。

第一種特別加入保険料率は当該事業に適用される労災保険率と同一の率です。

例えば、給付基礎日額が10,000円の場合、年間保険料算定基礎額は「10,000円×365」で3,650,000円となります。この金額に対して適用される保険料率(例えば0.003)を乗じることで、年間の第一種特別加入保険料が算出されます。

第二種特別加入保険料

第二種特別加入とは

第二種特別加入は、業務全般を自身で行っている事業主のうち、特定の業務を行っているものが対象とされます。

例えば、一人親方と呼ばれる業種や、自動車での旅客・運送業、土木建築、漁業、林業、医薬販売、廃棄物処理などがこれにあたります。

また、特定の農業、職業訓練、介護といった職種や、家内労働者・労働組合の常設役員も、「特定作業従事者」として第二種特別加入の対象となります。

第二種特別加入保険料の計算方法

第二種特別加入保険料の年間保険料は、第一種特別加入保険料と同様です。

「給付基礎日額×365」から算出される保険料算定基礎額に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。

第二種特別加入保険料率は事業の種類によって異なる所定率です。

第三種特別加入保険料

第三種特別加入とは

第三種特別加入は、海外で働く労働者を対象とした制度です。海外で働く労働者は通常の労災保険の対象外となるため、この制度が設けられています。

第三種特別加入保険料の計算方法

第三種特別加入保険料の年間保険料は、第一種、第二種と同様に「給付基礎日額×365」から算出される保険料算定基礎額に、定められた保険料率を乗じて算出します。

第三種特別加入保険料率は3/1000となっています。

給付基礎日額

特別加入者は、原則として賃金・給与という概念がないため、これに代わるものとして「給付基礎日額」が設定されます。

この給付基礎日額は、労災保険の保険料や補償額を算定する基礎となるものです。

給付基礎日額は3,500円から25,000円のうちから特別加入者の希望する額を考慮して、厚生労働大臣が定めます(所轄都道府県労働局長に委任)。

給付基礎日額が高くなるほど、保険料が高くなりますが、補償額も手厚くなります。

条文で確認

第十三条(第一種特別加入保険料の額)

第一種特別加入保険料の額は、労災保険法第三十四条第一項の規定により保険給付を受けることができることとされた者について同項第三号の給付基礎日額その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める額の総額にこれらの者に係る事業についての第十二条第二項の規定による労災保険率(その率が同条第三項の規定により引き上げ又は引き下げられたときは、その引き上げ又は引き下げられた率)と同一の率から労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去三年間の二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じた率(以下「第一種特別加入保険料率」という。)を乗じて得た額とする。

第十四条(第二種特別加入保険料の額)

第二種特別加入保険料の額は、労災保険法第三十五条第一項の規定により労災保険の適用を受けることができることとされた者(次項において「第二種特別加入者」という。)について同条第一項第六号の給付基礎日額その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める額の総額に労災保険法第三十三条第三号の事業と同種若しくは類似の事業又は同条第五号の作業と同種若しくは類似の作業を行う事業についての業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率(労災保険法第三十五条第一項の厚生労働省令で定める者に関しては、当該同種若しくは類似の事業又は当該同種若しくは類似の作業を行う事業についての業務災害及び複数業務要因災害に係る災害率)、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣の定める率(以下「第二種特別加入保険料率」という。)を乗じて得た額とする。

 第二種特別加入保険料率は、第二種特別加入者に係る保険給付及び社会復帰促進等事業に要する費用の予想額に照らし、将来にわたつて、労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるものでなければならない。

第十四条の二(第三種特別加入保険料の額)

第三種特別加入保険料の額は、第三種特別加入者について労災保険法第三十六条第一項第二号において準用する労災保険法第三十四条第一項第三号の給付基礎日額その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める額の総額に労災保険法第三十三条第六号又は第七号に掲げる者が従事している事業と同種又は類似のこの法律の施行地内で行われている事業についての業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣の定める率(以下「第三種特別加入保険料率」という。)を乗じて得た額とする。

 前条第二項の規定は、第三種特別加入保険料率について準用する。この場合において、同項中「第二種特別加入者」とあるのは、「第三種特別加入者」と読み替えるものとする。

過去問にチャレンジ

平成26年度

第1種特別加入保険料率は、特別加入の承認を受けた中小事業主等が行う事業に適用される労災保険率から、労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去3年間に発生した通勤災害に係る災害率を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じた率とされている。

答え「×」

過去3年間に発生した通勤災害に係る災害率ではなく、二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮するとしています。

なお、この厚生労働大臣が定める額は、現在0です。

平成24年度

個人事業主が労災保険法第34条第1項の規定に基づき、中小事業主等の特別加入の承認を受けた場合、当該事業主に係る当該承認を受けた保険年度の第1種特別加入保険料の額の算定の仕方について。
なお、事業の種類等は次のとおりである。
・事業の種類 飲食店
・当該事業に係る労災保険率 1000分の3
・中小事業主等の特別加入申請に係る承認日 令和4年12月15日
・給付基礎日額 8千円
・特別加入保険料算定基礎額 292万円

答え「(292万円(=8千円×365日) / 12月) × 4か月 × 1000分の3」

特別加入保険料算定基礎額=8千円×365日

年度途中の加入=(特別加入保険料算定基礎額/12)×加入月数(端数は切り上げ)

特別加入保険料=(特別加入保険料算定基礎額/12)×加入月数(端数は切り上げ)×特別加入保険料率

令和2年度

第2種特別加入保険料率は、第2種特別加入者に係る保険給付及び社会復帰促進等事業に要する費用の予想額に照らして、将来にわたり労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるものとされているが、第3種特別加入保険料率はその限りではない。

答え「×」

設問の規定は第三種特別加入保険料率について準用するとされています。

令和2年度

第2種特別加入保険料額は、特別加入保険料算定基礎額の総額に第2種特別加入保険料率を乗じて得た額であり、第2種特別加入者の特別加入保険料算定基礎額は第1種特別加入者のそれよりも原則として低い。

答え「×」

原則として同じになります。

第一号特別加入保険料も第二号特別加入保険料もいずれも「給付基礎日額に応ずる別表第四の右欄に掲げる額とする。」とされています。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

労働保険徴収法は労働保険(雇用保険法、労災保険料)と一体となって覚える必要があります。

一通り学習を終えたら、横断的に復習していくのが良いでしょう。

今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。

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