労働保険料とは
労働保険の事業に要する費用に充てるため政府が徴収する保険料を労働保険料と言います。
労働保険料にはいくつか種類があり、そのそれぞれで算出方法が異なります。
今回の記事では、主となる「一般保険料の額」について、その算出方法等をまとめます。
一般保険料の額
事業主が労働者に支払う賃金を基礎として算定する保険料をいい、年間の賃金総額に労災保険率と雇用保険率とを合計した率(労災保険に係る保険関係のみが成立している事業にあっては労災保険率、雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業にあっては雇用保険率)を乗じて計算します。
一般保険料率
一般保険料の額を算定する場合に用いる保険料率をいい、労災保険率と雇用保険率を加えた率をいいます(労災保険の保険関係のみが成立している事業にあっては労災保険率が一般保険料率となり、雇用保険の保険関係のみが成立している事業にあっては雇用保険率が一般保険料率となります)。
労災保険率は業務災害及び通勤災害に係る給付並びに労働者の福祉等に要する費用を考慮し事業の種類ごとに定められています。
雇用保険率は、失業等給付並びに労働者の雇用の安定や改善等に要する費用を考慮して定められています。
賃金総額
賃金総額とは、事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、手当、賞与、その他名称の如何を問わず労働の対償として支払うすべてのもので、税金その他社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。
賃金総額の特例
次の事業については、特例により算定した額を当該事業に係る賃金総額とします。
請負による建設の事業
立木の伐採の事業
造林の事業、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業(立木の伐採の事業を除く。)
水産動植物の採捕又は養殖の事業
条文で確認しよう
第十条(労働保険料)
政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収する。
2 前項の規定により徴収する保険料(以下「労働保険料」という。)は、次のとおりとする。
一 一般保険料
二 第一種特別加入保険料
三 第二種特別加入保険料
三の二 第三種特別加入保険料
四 印紙保険料
五 特例納付保険料
第十一条(一般保険料の額)
一般保険料の額は、賃金総額に次条の規定による一般保険料に係る保険料率を乗じて得た額とする。
2 前項の「賃金総額」とは、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいう。
3 前項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定める事業については、厚生労働省令で定めるところにより算定した額を当該事業に係る賃金総額とする。
規則第十二条
法第十一条第三項の厚生労働省令で定める事業は、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち次の各号に掲げる事業であつて、同条第一項の賃金総額を正確に算定することが困難なものとする。
一 請負による建設の事業
二 立木の伐採の事業
三 造林の事業、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業(立木の伐採の事業を除く。)
四 水産動植物の採捕又は養殖の事業
規則第十三条
前条第一号の事業については、その事業の種類に従い、請負金額に別表第二に掲げる率を乗じて得た額を賃金総額とする。
2 次の各号に該当する場合には、前項の請負金額は、当該各号に定めるところにより計算した額とする。
一 事業主が注文者その他の者からその事業に使用する物の支給を受け、又は機械器具等の貸与を受けた場合には、支給された物の価額に相当する額(消費税等相当額を除く。)又は機械器具等の損料に相当する額(消費税等相当額を除く。)を請負代金の額(消費税等相当額を除く。)に加算する。ただし、厚生労働大臣が定める事業の種類に該当する事業の事業主が注文者その他の者からその事業に使用する物で厚生労働大臣がその事業の種類ごとに定めるものの支給を受けた場合には、この限りでない。
二 前号ただし書の規定により厚生労働大臣が定める事業の種類に該当する事業についての請負代金の額にその事業に使用する物で同号ただし書の規定により厚生労働大臣がその事業の種類ごとに定めるものの価額が含まれている場合には、その物の価額に相当する額(消費税等相当額を除く。)をその請負代金の額(消費税等相当額を除く。)から控除する。
過去問にチャレンジ
平成19年度
労働保険徴収法には、労働保険の事業に要する費用にあてるため政府が徴収する保険料(労働保険料)の種類として、一般保険料、特別加入保険料、船員特別保険料、印紙保険料及び特例納付保険料が規定されている。
答え「×」
船員特別保険料は労働保険料に含まれていません。
船員の保険料は社一科目の船員法の中に規定されています。
令和元年度
一般保険料の額は、原則として、賃金総額に一般保険料率を乗じて算出されるが、労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立している事業にあっては、労災保険率、雇用保険率及び事務経費率を加えた率がこの一般保険料率になる。
答え「×」
事務経費率は一般保険料に含まれません。
一般保険料に係る保険料率は、次のとおりとする。
一 労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立している事業にあつては、労災保険率と雇用保険率(第五項(第十項又は第十一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)、第八項又は第九項の規定により変更されたときは、その変更された率。第四項を除き、以下同じ。)とを加えた率
二 労災保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、労災保険率
三 雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、雇用保険率
労働保険徴収法 第十二条
平成26年度
労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、業態の特殊性等の理由により賃金総額を原則どおり正確に算定することが困難な事業については、特例による賃金総額の算出が認められているが、その対象となる事業には、「請負による建設の事業」や「水産動植物の採捕又は養殖の事業」が含まれる。
答え「〇」
法第十一条と施行規則第十二条のとおりです。
建設業、立木の伐採事業については、有期事業の一括でよく目にしますが、「造林の事業、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業(立木の伐採の事業を除く。)」、「水産動植物の採捕又は養殖の事業」についても忘れずに覚えておきましょう。
令和元年度
賃金総額の特例が認められている請負による建設の事業においては、請負金額に労務費率を乗じて得た額が賃金総額となるが、ここにいう請負金額とは、いわゆる請負代金の額そのものをいい、注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物の価額等は含まれない。
答え「×」
規則第十三条第1項では、「事業主が注文者その他の者からその事業に使用する物の支給を受け、又は機械器具等の貸与を受けた場合には、支給された物の価額に相当する額又は機械器具等の損料に相当する額を請負代金の額に加算する」としています。
なお、同条第2項後段にある「ただし書の規定により厚生労働大臣がその事業の種類ごとに定めるもの」とは、組み立て又は据え付けの機械装置のことです。この場合は、請負代金の額に加算はしません。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
労働保険徴収法は問題数が少ないですが、比較的得点しやすい科目と言えます。
今回の労働保険料の計算についても、基本的事項を覚えれば難しいことはありませんので、コツコツ学習を進めましょう!
今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。
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