【キホンのキ】健康保険法 標準報酬は厚生年金保険との違いに注意

報酬及び賞与

報酬

この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

健康保険法 第三条第五項

賞与

この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

健康保険法 第三条第六項

報酬と賞与に関する話で必ず出てくるのが、通勤費の話です。6か月ごとに支払われる場合の通勤費は果たしてどちらにあたるでしょうか?

過去問で詳しくお話しします。

現物給付の扱い

報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によって厚生労働大臣が定める。

 健康保険組合は、前項の規定にかかわらず、規約で別段の定めをすることができる。

健康保険法 第四十六条(現物給付の価格)

現物給付の価格の運用にあたっては、「被保険者の勤務地(常時勤務する場所)」が所在する都道府県の現物給与の価格を運用します。

派遣労働者については「派遣元事務所」の所在する都道府県

なお、労働保険にかかる賃金のうち通貨以外のものの取り扱いが、健康保険法と異なるので、違いを併せて覚えましょう。

賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。

労働保険徴収法 第二条第三項(定義)

第三条 法第二条第二項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる。

労働保険徴収法施行規則 第三条(通貨以外のもので支払われる賃金の範囲及び評価)

標準報酬月額

健康保険・厚生年金では、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額と税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた標準賞与額(健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。

標準報酬月額の決定

健康保険法の標準報酬月額等級は第1級から第50級まであります。この標準報酬月額等級は厚生年金保険法でも使用されているものです。

すべてを覚える必要はありませんが、いくつか覚えるべき節目のポイントがありますので、きちんとおさえておきましょう

標準報酬月額等級標準報酬月額報酬月額備考
第1級58,000円63,000円未満健康保険の標準報酬月額等級の最低等級
第4級88,000円83,000円以上93,000円未満厚生年金の標準報酬月額等級の第1級
第35級650,000円635,000円以上665,000円未満厚生年金の標準報酬月額等級の第32級
第50級1,390,000円1,355,000円以上健康保険の標準報酬月額等級の最高等級

等級区分の改定

 毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が100分の1.5を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。ただし、その年の3月31日において、改定後の標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の同日における被保険者総数に占める割合が百分の0.5を下回ってはならない。

 厚生労働大臣は、前項の政令の制定又は改正について立案を行う場合には、社会保障審議会の意見を聴くものとする。

健康保険法 第四十条

「毎年3月31日における」と「その年の9月1日から」はしっかり覚えましょう。

これと似たもので任意継続被保険者の標準報酬月額の決定があるので注意しましょう。

任意継続被保険者の標準報酬月額については、第四十一条から第四十四条までの規定にかかわらず、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額をもって、その者の標準報酬月額とする。

 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額

 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(健康保険組合が当該平均した額の範囲内においてその規約で定めた額があるときは、当該規約で定めた額)を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

健康保険法 第四十七条(任意継続被保険者の標準報酬月額)

過去問にチャレンジ

令和4年度

健康保険法第3条第5項によると、健康保険法において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。したがって、名称は異なっても同一性質を有すると認められるものが、年間を通じ4回以上支給される場合において、当該報酬の支給が給与規定、賃金協約等によって客観的に定められており、また、当該報酬の支給が1年間以上にわたって行われている場合は、報酬に該当する。

答え「〇」

設問の通り。平成30年7月30日保保発0730第1号の通達に次の通り記載があります。

1 報酬の範囲

(1)毎年七月一日現在における賃金、給料、俸給、手当又は賞与及びこれに準ずべきもので毎月支給されるもの(以下「通常の報酬」という。)以外のもの(以下「賞与」という。)の支給実態がつぎのいずれかに該当する場合は、当該賞与は報酬に該当すること。

ア 賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定(以下「諸規定」という。)によって年間を通じ四回以上の支給につき客観的に定められているとき。

イ 賞与の支給が七月一日前の一年間を通じ四回以上行われているとき。したがつて、賞与の支給回数が、当該年の七月二日以降新たに年間を通じて四回以上又は四回未満に変更された場合においても、次期標準報酬月額の定時決定(七月、八月又は九月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、報酬に係る当該賞与の取扱いは変らないものであること。

平成30年7月30日保保発0730第1号

平成26年度

報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合において、その価額は、その地方の時価によって都道府県知事が定めることになっている(健康保険組合が規約で別段の定めをした場合を除く。)。

答え「×」

都道府県知事」ではなく「厚生労働大臣」。なお、健康保険組合が規約で別に定めることができます。

平成28年度

毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が100分の1.5を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができるが、その年の3月31日において、改定後の標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の同日における被保険者総数に占める割合が100分の1を下回ってはならない。

答え「×」

後段「被保険者総数に占める割合が100分の1を下回ってはならない。」ではなく「被保険者総数に占める割合が100分の0.5を下回ってはならない。

標準報酬月額等級区分の改定は何度も見返して定型文として覚えてしまいましょう。

厚生年金保険の標準報酬月額等級区分の改定との違いに気を付けましょう

 毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。

厚生年金保険法第二十条第二項

直近では令和2年9月1日に第31級(620,000円)から第32級(650,000円)へ引き上げられました。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

標準報酬月額は健康保険法と厚生年金保険法の共通の概念ですが、微妙に運用が違うなど、試験で狙われやすい点です。

横断学習でしっかり身に着けておきましょう。

今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。

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