賃金の定義
労働基準法における賃金の定義は、試験でもよく出される非常に重要なものです。
賃金は労働者が労働の対価として受け取るお金や報酬のことを指します。
これは、労働者が使用者から受け取る報酬全般を指し、その対価は通常、時間給、日給、月給、成果給などの形態で支払われます。
賃金には以下の要素が含まれます。
基本給 | 労働者が一定の期間(時間、日、月など)に対して確定された金額を受け取る部分で、通常の労働時間に対する報酬を指します。 |
手当やボーナス | 基本給に加え、残業手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、賞与(ボーナス)、特別手当など、さまざまな追加的な報酬が賃金の一部として支給されることがあります。 |
福利厚生 | 健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料、年金の補助も賃金の一部と見なされます。 ただし、一般的に現物給付は賃金に含まれません。 |
その他の手当 | 住宅手当、家族手当、交通費支給など、雇用主が提供するその他の手当も、賃金の構成要素となります。 |
賃金の定義は、労働者と雇用主の間の契約や労働条件によって異なることがありますが、労働基準法は最低賃金や労働時間、休暇などの労働条件を規定し、労働者の権利を保護するために存在します。
労働基準法に基づいて、最低賃金や残業手当などの最低基準が設けられ、労働者が最低限の経済的な保護を受けることができるようになっています。
賃金支払の5原則
賃金は「①通貨で②直接労働者に③その全額を④毎月一回以上、⑤一定期日を定めて」支払わなければなりません。
これを賃金支払の5原則と言います。試験でもよく出るテーマですので、条文と過去問でしっかり定着させましょう。
条文を紹介
労働基準法 第二十四条(賃金の支払い)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
労働基準法 第二十四条(賃金の支払い)
労働基準法 第二十五条(非常時払)
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
労働基準法 第二十五条(非常時払)
労働基準法 第二十六条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
労働基準法 第二十六条(休業手当)
過去問にチャレンジ
令和元年度
私有自動車を社用に提供する者に対し、社用に用いた場合のガソリン代は走行距離に応じて支給される旨が就業規則等に定められている場合、当該ガソリン代は、労働基準法第11条にいう「賃金」に当たる。
答え「×」
設問の場合、ガソリン代は実費弁償であり、労働の対価ではないため、賃金にはみなされません。
昭和28年2月10日基収6212号、昭和63年3月14日基発150号にあるとおりです。
令和3年度
労働者が法令により負担すべき所得税等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等を含む。)を事業主が労働者に代わって負担する場合、当該代わって負担する部分は、労働者の福利厚生のために使用者が負担するものであるから、労働基準法第11条の賃金とは認められない。
答え「×」
設問の場合は、賃金に該当します。
昭和63年3月14日基発150号
労働者が法令により負担すべき所得税等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等を含む)を事業主が労働者に代って負担する場合は、これらの労働者が法律上当然生ずる義務を免れるのであるから、この事業主が労働者に代って負担する部分は賃金とみなされる。
令和元年度
賃金にあたる退職金債権放棄の効力について、労働者が賃金にあたる退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、当該意思表示は有効であるとするのが、最高裁判所の判例である。
答え「〇」
設問の通り正しい。社労士試験では頻出の判例問題。必ずおさえておきましょう。
シンガー・ソーイング・メシーン事件(1973年1月19日最高二小判決)
退職に際し、「会社に対していかなる性質の請求権をも有しないことを確認する」旨の書面に署名して会社に差し入れた者が、退職金を請求したことに関連して、賃金にあたる退職金債権の放棄の効力が争われた事例。
判決
退職金は労働基準法において賃金に該当し、その支払いは全額一括払いの原則に従うべきである。
ただし、労働者が自発的に退職金を放棄する意思を示す場合、この意思表示は効力を持つ可能性がある。
労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならず、本件では労働者が競合他社に就職し、雇用主との間に疑惑があったため、退職金を受け取らないことで被害を補填する趣旨で意思表示を行ったとされた。
したがって、原審の判断が妥当であり、労働者の退職金放棄の意思表示は有効であると結論された。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
賃金に関しては頻出テーマではありますが、基本をきちんとおさえれば得点は難しい問題ではありません。
過去問や事例問題をたくさん解いて、習得しましょう。
今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。
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