【緊急特集】労働安全衛生法 建設業の安全衛生体制まとめ

改めて見直す、労働安全衛生法

東京駅近くで起きた事故

9月19日午前、東京駅近く八重洲で行われた複合ビルの建設現場で鉄骨が落下し、死者を出す大きな事故が発生しました。

被害を受けられた方のご冥福を心よりお祈りします。

原因は調査中とのことですが、作業中の人的なミスが原因とのことです。

労働者の安全と健康を守る法律

建設現場に事故はつきものですが、事故を予防し、労働者の安全と健康を確保するのが、労働安全衛生法の目的です。

法律では、その目的を達成するため事業者や労働者のほか、発注者、機械等貸与者の責務などを定めています。

また、各現場において安産衛生管理体制を構築し、必要な措置を講じることとなっています。

条文を紹介

労働安全衛生法 第三条(事業者の責務)

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない。

 建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。

労働安全衛生法 第三条(事業者の責務)

労働安全衛生法 第四条(労働者の責務)

労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。

労働安全衛生法 第四条(労働者の責務)

労働安全衛生法では、事業主だけでなく労働者についても、各措置への協力に努めることを規定しています。

建設現場における安全管理体制

建設業または造船業は特定事業通常の安全管理体制に加え、次の者を選任することとされています。

  • 統括安全衛生責任者
  • 元方安全衛生管理者(建設業のみ)
  • 店社安全衛生管理者
  • 安全衛生責任者

各責任者の関係図等が厚生労働省ホームページに掲載されているので、紹介します。

https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/000269925.pdf

過去問にチャレンジ

平成22年度

建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の数が労働安全衛生法施行令で定める仕事の区分に応じて一定数未満であるときを除き、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮等をさせなければならない。

答え「〇」

設問の通り、統括安全衛生管理者を選任する必要があります。

統括安全衛生管理者は、元方安全衛生管理者を指揮し、特定元方事業者等が講ずべき労働災害を防止するために必要な措置に関する事項を統括管理します。

また、統括安全衛生管理者の選任規模は次の通りです。

仕事の区分従事労働者数
・ずい道等の建設の仕事
・橋梁の建設の仕事(所定の場所に限る)
・圧気工法による作業を行う仕事
常時30人以上
上記以外の建設・造船の仕事常時50人以上

ちなみに、この選任規模に満たない場合は、店社安全衛生管理者を選任することとなります。

仕事の区分従事労働者数
・ずい道等の建設の仕事
・橋梁の建設の仕事(所定の場所に限る)
・圧気工法による作業を行う仕事
常時20人以上30人未満
上記以外の建設・造船の仕事常時20人以上50人未満

【下記に示す事業者が一の場所において行う建設業の事業に関して。
 なお、この場所では甲社の労働者及び下記乙①社から丙②社までの4社の労働者が作業を行っており、作業が同一の場所において行われることによって生じる労働災害を防止する必要がある。

甲社   鉄骨造のビル建設工事の仕事を行う元方事業者
      当該場所において作業を行う労働者数  常時5人
乙①社  甲社から鉄骨組立工事一式を請け負っている事業者
      当該場所において作業を行う労働者数  常時10人
乙②社  甲社から壁面工事一式を請け負っている事業者
      当該場所において作業を行う労働者数  常時10人
丙①社  乙①社から鉄骨組立作業を請け負っている事業者
      当該場所において作業を行う労働者数  常時14人
丙②社  乙②社から壁材取付作業を請け負っている事業者
      当該場所において作業を行う労働者数  常時14人

甲社は、元方安全衛生管理者を選任しなければならない。

答え「〇」

安全衛生管理体制の問題では、このような事例問題がよく出されますが、難易度は高くないので、落ち着いて解きましょう。

まず、設問の建設事業は数次の請負事業であるため、この場合「甲社」が元方事業者となり、「乙社」、「丙社」が関係請負人になります。

また設問の場合、常時50人以上の従事労働者がいるので、次の通り選任義務があります。

甲社統括安全衛生責任者
元方安全衛生管理者(統括安全衛生責任者を選任する建設業で、元方事業者に選任義務
乙社
丙社
安全衛生責任者(統括安全衛生責任者を選任する事業で関係請負人に選任義務)

終わりに

いかがでしたでしょうか。

労働安全衛生法はとても大事な法律です。

すべての事業者がきちんと規定通りに動けば痛ましい事故も少なくなるはず。

今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。

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