【超重要】労働者災害補償法 業務災害を極める

労働者の災害を補償する

労働者災害補償法は、労働者が勤務中や通勤中に、怪我や病気などにより障害状態になったり、死亡したときなどに、その労働者またはその遺族に保険給付を行うことを主な目的とした法律です。

保障の対象となる災害は3つに分かれています。

業務災害業務上の負傷、疾病、障害又は死亡
複数業務要因災害2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡
通勤災害通勤による負傷、疾病、障害又は死亡

このうち、今回は業務災害について取り上げます。

業務災害とは

業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡を指します。

業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることを意味します。

このことを「業務起因性」と「業務遂行性」といいます。

実際の試験では、設問の事例が労災認定されるかについて、この2つを根拠に回答を導き出すことになります。

まずは、基本をきちんと把握しましょう。

業務起因性

業務起因性とは、仕事が原因となってケガ、疾病、障害、または死亡が発生し、その間に因果関係がある状態を指します。

業務起因性が認められるためには、「その業務に従事していたならば、どの労働者であっても同様の災害が発生したと考えられる場合」である必要があります。

ただし、業務とは関係のない行為や事情が原因の場合や、天災地変による場合は、業務起因性が認められません。

業務遂行性

業務遂行性は、事業主の支配下にある状態を指し、仕事中だけでなく休憩時間や用便中なども含まれます。

条文を紹介

労働者災害補償法 第七条

この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)

 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

 二次健康診断等給付

過去問にチャレンジ

平成29年度

A会社の大型トラックを運転して会社の荷物を運んでいた労働者Bは、Cの運転するD会社のトラックと出会ったが、道路の幅が狭くトラックの擦れ違いが不可能であったため、D会社のトラックはその後方の待避所へ後退するため約20メートルバックしたところで停止し、徐行に相当困難な様子であった。これを見かねたBが、Cに代わって運転台に乗り、後退しようとしたが運転を誤り、道路から断崖を墜落し即死した場合、業務上として取り扱われる。

答え「〇」

設問の場合は「業務起因性」、「業務遂行性」ともに満たすので、業務災害として認められます。

このように、業務災害の問は個別具体的な案件が問題として出されますので、基本に立ち返って「業務起因性」、「業務遂行性」にあたるかをチェックしましょう。

ちなみにこの事例は「昭和31年3月31日基収5597号」に記載があります。(残念ながらリンクを探せなかったので、紹介のみです。)

平成27年度

勤務時間中に、作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家人が届けてくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中で、運転を誤り、転落して負傷した場合、業務上の負傷に該当する。

答え「〇」

設問の場合は「業務起因性」、「業務遂行性」ともに満たすので、業務災害として認められます。

ポイントは「作業に必要」であり、「上司の了解」を得ているところではないでしょうか。

ちなみに、この事例が載っている「昭和32年7月20日基収3615号」に細かい状況が掲載されています。

設問の方は、午前中の業務では眼鏡が不要であったが、午後の業務に必要なため、早退を上司に申し出たところ、妻が工場まで届けてくれたとのことです。

平成26年度

自動車運転手Aは、道路工事現場に砂利を運搬するよう命ぜられ、その作業に従事していた。砂利を敷き終わり、Aが立ち話をしていたところ、顔見知りのBが来て、ちょっと運転をやらせてくれと頼んで運転台に乗り、運転を続けたが、Aは黙認していた。Bが運転している際、Aは車のステップ台に乗っていたが、Bの不熟練のために電柱に衝突しそうになったので、とっさにAは飛び降りようとしたが、そのまま道路の外側にはね飛ばされて負傷した。このAの災害はAの職務逸脱によって発生したものであるため、業務外とされている。

答え「〇」

設問のとおり、業務に関係ない者に運転させたのは恣意行為であり、職務逸脱によって発生したものとし業務外とされている。

この事例は昭和26年4月13日基収1497号に記載されています。

なんというか、昭和時代の事例ってハメ外しすぎじゃないかっていうのが多くて面白いですね。

良くも悪くも緩い時代だったということでしょうか。

令和4年度

仕事で用いるトラックの整備をしていた労働者が、ガソリンの出が悪いため、トラックの下にもぐり、ガソリンタンクのコックを開いてタンクの掃除を行い、その直後に職場の喫煙所でたばこを吸うため、マッチに点火した瞬間、ガソリンのしみこんだ被服に引火し火傷を負った場合、業務災害と認められる。

答え「〇」

なかなか難しい設問ですが、一つ一つ確認していきましょう。

まず、「職場の喫煙所」ということで、事業場内であり、事業主の支配・管理下にあれば、休憩中であっても業務遂行性は認められる。

また、「タンクの掃除の直後」ということがあり、このことがなければ本件は発生しなかったと考えられるので、業務起因性も認められる。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

業務災害の設問は判断が難しいものが多いですが、「業務起因性」と「業務遂行性」を意識して取り組みましょう。

今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。

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