労働契約の見直し
今回は労働基準法から労働契約に関するお話しです。労働契約法(労一)にも関わることですが。
いま、厚生労働省が力を入れているのが、労働契約の無期転換ルールです。
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)。
厚生労働省では、無期転換ルールを周知するための専用サイトを作成するなど、力を入れています。
今回は、その前提となる労働契約の期間について、労働基準法の条文を紹介、過去問および解説で理解を深めます。
条文紹介
労働基準法 第十四条(契約期間等)
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
① 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
② 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
二 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
三 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
労働基準法 第十四条(契約期間等)
過去問のチャレンジ
令和3年度
労働基準法第14条にいう「一定の事業の完了に必要な期間を定める」労働契約については、3年(同条第1項の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結することが可能であるが、その場合には、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかであり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要である。
答え「〇」
労働契約の期間に関する問題は、契約期間3年(もしくは5年)ということに目が行きがち(特に契約期間が5年となる場合)ですが、以下の2つが忘れがち
(☑はい、私はうっかり八兵衛です)
- 期間の定めのないもの
- 一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの
また、後段の「有期的事業であることが客観的に明らかであり…」については、設問の通りですが、労働基準法全般に言えることですが、労働時間や休日、解雇など、実態に即した内容が優先される(ただし、客観的に)イメージです。
平成28年度
使用者は、労働者が高度の専門的知識等を有していても、当該労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に就いていない場合は、契約期間を5年とする労働契約を締結してはならない。
答え「〇」
専門的知識等を有する者の契約はひっかけが多いです。答えは設問の通りです。
本条文に該当する専門的知識等を有するものは「労働基準法第十四条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(厚生労働省HPへ)」にあるとおりです。
また、条件に掲げる年収1,075万円以上は、毎月勤労統計の基準年間平均給与額の3倍の額です。
労働時間等の適用除外「高度プロフェッショナル制度」と重なる部分が多いです。
平成29年度
ある使用者が、その期間が3か月の労働契約を2回更新し、3回目を更新しないこととした。その場合には、労働基準法第14条第2項の規定に基づく「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」によれば、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
答え「×」
雇止めの予告は、当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限ります。
設問の場合は、いずれの条件にも該当しないため、雇止めの予告が必要ありません。
これとセットで覚えたいのが「雇用期間についての配慮」です。
厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じ て、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
労働条件の改善は厚生労働省の至上命題です。
その根本となる労働契約のルールが常に運用が見直されていますので、よくチェックしましょう。
今後も、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。
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