労働保険徴収法のメリット制:徹底解説

ぽんこつ
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労働保険徴収法のメリット制は、事業主の皆様が直面する労働災害のリスクと保険料負担の公平性を確保するための重要な制度です。

この記事では、そのメリット制の詳細について、その適用要件から計算方法、さらには改定要件まで、徹底的に解説します。

労働災害防止の取り組みを通じて保険料負担を軽減するための具体的な手段として、メリット制の理解は必須です。

メリット制とは?

メリット制の概要

労働保険徴収法に規定されているメリット制は、事業場での労働災害の発生状況に応じて、保険料または保険料率が調整される制度です。

具体的には、過去3年間の労災保険の納付済保険料額に対する支給済保険給付額の割合を算出し、それに応じて、3年間の最終年度の翌々年度の労災保険率を±40%の範囲で増減します。

概算保険料、確定保険料の詳細はそれぞれ次の記事で解説しています。

メリット制の目的

この制度の目的は、同じ業種でも事業場の環境や取り組みにより災害リスクが異なるため、それぞれの事業場ごとの災害リスクに応じて、全ての事業主が公平な保険料負担になるようにすることです。

つまり、労働災害の発生が少なければ労災保険料は割安になり、反対に災害発生が多ければ保険料は割高となります。

メリット制の適用要件

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メリット制の適用は一定の条件を満たす必要があります。

具体的には、労災保険の成立から3年以上が経過していること、そして過去3年間の労災保険の確定保険料が一定額以上であることなどが条件となります。

継続事業のメリット制

メリット制の適用事業

継続事業におけるメリット制の適用を受ける事業は、連続する3保険年度中の各年度において次のいずれかに該当する規模の事業です。

  1. 100人以上の労働者を使用する事業
  2. 20人以上100人未満の労働者を使用する事業で、労働者の数に労災保険率から非業務災害率1000分の0.6)を減じた率を乗じて得た数(災害時係数)が厚生労働省令で定める数(0.4)以上であるもの
  3. 有期事業の一括の適用を受けている建設業または立木の伐採事業であって、当該保険年度の確定保険料の額が40万円以上の事業

また、当該連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日(基準日)において、労災保険に係る保険関係が成立したのち3年以上経過した事業が適用を受けます。

改定要件

メリット制度の改定要件には、連続する3保険年度中の確定保険料に対する保険給付等業務災害に係る保険給付及び特別支給金)の割合を算出します。これをメリット収支率といいます。

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メリット収支率は、以下の手順で計算されます。

  • メリット収支率の分子(保険給付等の額):メリット収支率の分子に用いる保険給付等の額は、原則として、収支率算定期間に、業務災害として支給した保険給付(短期給付・長期給付)及び特別支給金の総額です。
  • メリット収支率の分母(保険料×第一種調整率):メリット収支率の算定に当たり、分子に算入される年金給付は一時金に換算した額ですが、分母の保険料額は年金として保険給付に要する費用を基に設定された料率による保険料であるため、一定の係数を分母に掛けて、分子と見合う額にします。その係数を、第1種調整率といいます。
  • メリット料率の算定:メリット収支率を増減表に当てはめ、メリット増減率を判定します。次に、「基準となる労災保険率(その業種の労災保険率)から、非業務災害率(=1000分の0.6)を引いた率」を、判定したメリット増減率で増減します。この値に非業務災害率を加えたものが、メリット収支率になります。

上の計算で算出されたメリット収支率が、連続する3保険年度の間、100分の85を超え、または100分の75以下である場合に、労災保険料率がメリット改定されます。

収支率の計算の注意点

収支率の算定基礎に含まれるのは、業務災害に関する給付額や保険料額であり、複数業務要因災害、二次健康診断等給付(被業務災害)に関する給付額や保険料額は算定基礎に含まれません。

また、第一種特別加入に係る給付額や保険料額は収支率の計算に含まれますが、第3種特別加入の海外事業に係る給付額や保険料額は算定基礎に含まれません。

メリット改定

メリット改定の要件を満たした場合は、その事業についての労災保険料から被業務災害率を減じた率を、100分の40(一括有期事業のうち、立木の伐採事業については100分の35、建設業または立木の伐採事業であって、連続する3保険年度中のいずれかの保険年度の確定保険料の額が40万円以上100万円未満であるものは100分の30)の範囲内において、厚生労働省令で定める率だけ引き上げまたは引き下げた率に非業務災害率を加えた率を、基準日の属する保険年度の次の次の保険年度の労災保険率とすることができます。

有期事業のメリット制

有期事業メリット制適用事業

有期事業のメリット制の適用を受ける事業は、労災保険に係る保険関係が成立している建設業または立木の伐採事業で、次に該当するものです。

  1. 確定保険料の額が40万円以上
  2. 建設事業で、請負金額が1億1千万円以上
  3. 立木の伐採事業で、素材生産量が1,000立方メートル以上

メリット改定要件

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メリット制適用事業が次のいずれかに該当した場合、確定保険料の額がメリット改定されます。

  1. 事業が終了した日から3ヶ月を経過した日前における業務災害に関する保険給付の額と一般保険料に関する確定保険料の額の比率が100分の85を超えるか、100分の75以下である場合
  2. 上記の条件を除き、事業が終了した日から9ヶ月を経過した日前における業務災害に関する保険給付の額と一般保険料に関する確定保険料の額の比率が100分の85を超えるか、100分の75以下である場合

メリット改定

メリット改定の要件を満たした場合は、確定保険料の額を、その確定保険料の額(労災保険率に応ずる部分のみ)から被業務災害率(特別加入被業務災害率を含む)に応ずる部分の額を減じた額に、厚生労働省令で定める率(建設業については100分の40、立木の伐採事業ついて100分の35の範囲内において定められます。)を乗じて得た額だけ引き上げまたは引き下げた額を、その事業について新しい確定保険料(改定確定保険料)の額とします。

改定確定保険料額の計算式

確定保険料の額±((確定保険料額-被業務災害率に応ずる部分の額)×(40%又は35%以下の率))

差額の徴収、還付、または充当

徴収

有期事業のメリット制の適用により確定保険料の額が引き上げられた場合には、その引き上げられた改定確定保険料の額と従前の確定保険料の額との差額が徴収されます。

この場合、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限と定め、事業主に納入告知書で通知しなければなりません。

還付

メリット制の適用により確定保険料が引き下げられた場合は、事業主の還付請求により、その引き下げられた改定確定保険料の額と従前の確定保険料の額との差額が還付されます。

還付請求は、引き下げられた確定保険料の額の通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に行わなければなりません。

充当

還付請求がない場合で、事業主から徴収すべき未納の労働保険料その他の徴収金または未納の一般拠出金等がある場合は、当該差額は、当該徴収金に充当され、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、充当処理を行った旨を事業主に通知しなければなりません。

終わりに

労働保険徴収法のメリット制は、事業主の皆様が直面する労働災害のリスクと保険料負担の公平性を確保するための重要な制度です。

この記事を通じて、その全貌を理解し、あなたの事業運営に役立てていただければ幸いです。労働災害防止の取り組みを通じて保険料負担を軽減するための具体的な手段として、メリット制の理解は必須です。

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