雇用保険法の延長給付制度は、離職後の生活を支え、再就職を促進するための重要な制度です。しかし、その詳細や活用方法は一般的にはあまり知られていません。
本記事では、延長給付制度の基本的な概要から、具体的な申請方法、活用例までを詳しく解説します。
これにより、読者の皆様が制度を理解し、適切に活用することで、離職後の生活をより安定させることができます。どうぞ、最後までお読みください。
延長給付について
経済情勢や受給資格者の状況等によっては、所定給付日数分の基本手当では十分な保護を図れない場合があります。
所定給付日数の詳細は以下の記事で解説しています。
そのような場合に、所定給付日数を超えて基本手当を支給する「延長給付」制度があります。
延長給付制度には状況等に応じていくつかのメニューがあります。
それぞれの延長給付の概要や条件を一つずつ見ていきましょう。
訓練延長給付
訓練延長給付の概要
雇用保険法第24条に規定されている訓練延長給付は、雇用保険の受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓訓練等を受ける場合に、本来の所定給付日数を超えて基本手当を支給する制度です。
この制度は、雇用保険の受給資格者が求職者支援訓練の受講を開始する場合にも適用されます。
訓練延長給付の概要は以下のとおりです。
- ハローワークで職業訓練の受講指示を受けること
- 所定給付日数の2/3を終了する以前に職業訓練を開始すること
- 受講期間が2年以内のコースを受けること
- 過去1年以内に公共職業訓練を受講していないこと
訓練延長給付の支給
訓練延長給付によって支給される基本手当の日額は、本来支給される基本手当の日額と同じ額です。
給付基礎日額、基本手当の日額の詳細は以下の記事で詳細を解説してます。
訓練延長給付によって支給される基本手当は、所定給付日数分だけ支給されます。その後もなお公共職業訓練等を受講するために待期している期間が対象です。
支給限度日数は、30日から支給残日数を差し引いた日数です。
個別延長給付
個別延長給付の概要
雇用保険法第24条の2に規定されている個別延長給付は、特定の条件を満たす雇用保険の受給者が対象となり、所定の給付日数が終了した後も給付日数が延長される制度です。
個別延長給付の対象となる方
倒産・解雇などの理由により離職された方(特定受給資格者)や期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職された方(特定理由離職者)のうち、以下の(1)~(3)のいずれかに該当する方であって、かつ、公共職業安定所長が指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めた方。
(1) 心身の状況が以下のイ~ハのいずれかに該当する方。
- イ 難治性疾患を有する方
- ロ 発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者である方
- ハ 障害者雇用促進法第2条第1号に規定する障害者である方
(2) 雇用されていた適用事業が激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第2条の規定により激甚災害として政令で指定された災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた方。
(3) 雇用されていた適用事業が激甚災害その他災害救助法の適用となる災害等を受けたため離職を余儀なくされた方。
個別延長給付の対象とならない場合
- 求職の申込みをした日から支給終了となる失業認定日の前日までの間において、求人への応募回数が原則として所定の回数に満たない場合。
- 所定の求職活動実績がないことで失業認定日に不認定処分を受けた場合。
- やむを得ない理由がなく、失業認定日に来所しなかったことにより不認定処分を受けた場合。
- 雇用失業情勢や労働市場の状況等から、現実的ではない求職条件に固執される方等。
- 正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練を受けること、再就職を促進するために必要な職業指導を拒んだことがある場合。
延長される給付日数
広域延長給付
広域延長給付の概要
広域延長給付は、その地域における雇用に関する状況等から判断して、その地域内に居住する求職者がその地域において職業に就くことが困難であると認める地域について、求職者が他の地域において職業に就くことを促進するための計画を作成し、関係都道府県労働局長及び公共職業安定所長に、当該計画に基づく広範囲の地域にわたる職業紹介活動。
条件と給付内容
具体的な条件としては、厚生労働大臣が失業者が多数発生した地域について広域職業紹介活動を行わせた場合において必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り当該地域に係る広域職業紹介活動により職業のあっせんを受けることが適当と認められる受給資格者について、所定給付日数を超えて基本手当を支給する措置(広域延長措置)を決定することができます。
広域延長給付は、90日を限度として行われます。
全国延長給付
全国延長給付の概要
雇用保険法第27条に規定されている全国延長給付は、失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準に該当する場合に、受給資格者の就職状況からみて必要があると認められたとき、その指定する期間内に限り、所定給付日数を超えて受給資格者に基本手当を支給する措置を厚生労働大臣が決定することができる制度です。
全国延長給付の条件
全国延長給付の具体的な条件は以下の通りです。
- 厚生労働大臣が失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準に該当する場合。
- 受給資格者の就職状況からみて必要があると認められたとき。
政令で定める基準とは以下の通りです。
全国延長給付の対象者と給付限度
全国延長給付は、すべての受給資格者が対象となり、基本手当の日額の90日分を限度として行われます。
地域延長給付
雇用保険法附則に規定されている地域延長給付は、特定の条件を満たす雇用保険の受給者が対象となり、所定の給付日数が終了した後も給付日数が延長される制度です。
地域延長給付の対象となる方
- 倒産・解雇などの理由により離職された方(特定受給資格者)や期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職された方(特定理由離職者)であって、
- 厚生労働省令で定める基準に照らして雇用機会が不足していると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住し、
- かつ、公共職業安定所長が指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたもの。
地域延長給付の対象とならない場合
延長される給付日数
原則60日分延長されます。ただし、所定給付日数が270日又は330日である方は、30日分の延長になります。
終わりに
雇用保険法の延長給付制度は、離職後の生活を支え、再就職を促進するための重要な制度です。
その活用は、個々の状況やニーズによります。本記事では、延長給付制度の概要から具体的な申請方法、活用例までを詳しく解説しました。
しかし、制度は複雑であり、また時々変更されます。したがって、最新の情報を得るためには、公的な機関や専門家に相談することをお勧めします。
雇用保険法の延長給付制度を理解し、適切に活用することで、離職後の生活をより安定させることができます。
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