社労士試験の出題形式
社労士試験は「選択式問題」と「択一式問題」の大きく2つに分かれています。
それぞれの配点は次の通りです。
試験科目 | 選択式 計8科目(配点) | 択一式 計7科目(配点) |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労働者災害補償保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 1問(5点) | 10問(10点) |
雇用保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 1問(5点) | 10問(10点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 10問(10点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
選択式では「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」からの出題はありません。択一式の「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」は、各10問のうち問1~問7が「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」から出題され、問8~問10の3問(計6問)が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」から出題されます。
社労士試験オフィシャルサイトより引用
選択式問題
選択式問題は、穴抜きされた文章に適する語を選択する問題です。
法律の条文や行政通達、裁判所の判例から出題されます。
令和元年度 労働基準法及び労働安全衛生法 選択式
〔問 1〕 次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 最高裁判所は、使用者がその責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合における、労働者が解雇期間中、他の職に就いて得た利益額の控除が問題となった事件において、次のように判示した。
「使用者の責めに帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という。)の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法 12 条 1 項所定の【 A 】 の 6 割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」「使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち【 A 】の 6 割を超える部分から当該賃金の【 B 】内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が【 A 】の 4 割を超える場合には、更に【 A 】算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法 12 条4 項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる。」
2 労働基準法第 27 条は、出来高払制の保障給として、「使用者は、【 C 】に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めている。
3 労働安全衛生法は、その目的を第 1 条で「労働基準法(昭和 22 年法律第49 号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、【 D 】の形成を促進することを目的とする。」と定めている。
4 衛生管理者は、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから選任しなければならないが、厚生労働省令で定める資格を有する者には、医師、歯科医師のほか【 E 】などが定められている。
選択肢
① 安全衛生に対する事業者意識 ② 安全衛生に対する労働者意識
③ 衛生管理士 ④ 快適な職場環境
⑤ 看護師 ⑥ 業務に対する熟練度
⑦ 勤続期間 ⑧ 勤務時間数に応じた賃金
⑨ 作業環境測定士 ⑩ 支給対象期間から 2 年を超えない期間
⑪ 支給対象期間から 5 年を超えない期間 ⑫ 支給対象期間と時期的に対応する期間
⑬ 諸手当を含む総賃金 ⑭ 全支給対象期間
⑮ そのための努力を持続させる職場環境 ⑯ 特定最低賃金
⑰ 平均賃金 ⑱ 労働衛生コンサルタント
⑲ 労働時間 ⑳ 労働日数
解答
【A】⑰ 平均賃金
【B】⑫ 支給対象期間と時期的に対応する期間
【C】⑲ 労働時間
【D】④ 快適な職場環境
【E】⑱ 労働衛生コンサルタント
選択式問題は一つの文章で2~3つの穴抜きがされていることもあります。したがって、1つ分からないだけでまとめて不正解になる可能性がある、受験生泣かせの出題形式です。
択一式問題
択一式問題は、5つの選択肢の中から正しいもの(または誤っているもの)を選ぶ問題です。
令和2年度 健康保険法 択一式
〔問 1〕 健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A 全国健康保険協会は、被保険者の保険料に関して必要があると認めるときは、事業主に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該協会の職員をして事業所に立ち入って関係者に質問し、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
B 被保険者が同一疾病について 1 年 6 か月間傷病手当金の支給を受けたが疾病が治癒せず、その療養のため労務に服することができず収入の途がない場合であっても、被保険者である間は保険料を負担する義務を負わなければならない。
C 患者申出療養の申出は、厚生労働大臣が定めるところにより、厚生労働大臣に対し、当該申出に係る療養を行う医療法第 4 条の 3 に規定する臨床研究中核病院(保険医療機関であるものに限る。)の開設者の意見書その他必要な書類を添えて行う。
D 特定適用事業所に使用される短時間労働者の被保険者資格の取得の要件である「 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であること」の算定において、短時間労働者の所定労働時間が 1 か月の単位で定められ、特定の月の所定労働時間が例外的に長く又は短く定められているときは、当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を 12 分の 52 で除して得た時間を 1 週間の所定労働時間とする。
E 地域型健康保険組合は、不均一の一般保険料率に係る厚生労働大臣の認可を受けようとするときは、合併前の健康保険組合を単位として不均一の一般保険料率を設定することとし、当該一般保険料率並びにこれを適用すべき被保険者の要件及び期間について、当該地域型健康保険組合の組合会において組合会議員の定数の 3 分の 2 以上の多数により議決しなければならない。
正解(誤っている肢)はAです。
冒頭「全国健康保険協会は、…」を「厚生労働大臣は…、」と読み替えると正しくなります。
健康保険法 第百九十八条(立入検査等)
厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関して必要があると認めるときは、事業主に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員をして事業所に立ち入って関係者に質問し、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
択一式問題は7科目×各10問=計70問であり、試験時間は210分となっています。
単純計算で1問あたり3分しか使えません。
短時間でかつ正確に正解を導き出す練習が必要になります。
社労士試験の合格ライン
社労士試験で合格するためには、一度の試験で選択式問題、択一式問題それぞれで合格点を取る必要があります。どちらかが合格点数に達していても、片方が不合格だと合格とはなりません。
規定されている合格ライン
問題形式 | 満点 | 合格点 |
---|---|---|
選択式 | 8科目×各5点=40点満点 | 合計28点以上 かつ 各科目3点以上 |
択一式 | 7科目×各10点=70点満点 | 合計49点以上 かつ 各科目4点以上 |
ポイントは各科目に設定されている基準点です。1科目でもこの基準を下回ると、ほかの科目で良い点数をとっても、その試験は不合格となってしまいます。
すなわち、「捨て科目」を作れないので、すべて満遍なく得点する力が求められます。
この各科目の基準点こそが、社労士試験が最難関と言われる所以です。
毎年多くの受験生がこの1点に泣いています。
したがって、社労士試験では、合計点数を上回ることと各科目の基準点を下回らないことを両立させるための勉強がポイントです。
実際の合格ライン
とはいえ、このままではあまりにも厳しすぎるので、実際にはその年の受験生の得点分布を考慮して、合格ラインが変動します。
これは社労士試験の「救済」と呼ばれ、各資格予備校では試験終了後に合格ライン予想が建てられていて、受験生はそれを見て一喜一憂しています。
この救済については、厚生労働省が公表している「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」に詳しく掲載されています。
平成29年度を例に
問題形式 | 合格点 |
---|---|
選択式 | 合計点24点以上 かつ 各科目3点以上 ただし、雇用保険法、健康保険法につき2点以上 |
択一式 | 合計点数45点以上 かつ 各科目4点以上 ただし、厚生年金保険法につき3点以上 |
詳しくは厚生労働省「第49回(平成29年度)社会保険労務士試験の合格規準について」をご覧ください
終わりに
いかがだったでしょうか?
社労士試験がなぜ最難関と言われるのか、その問題形式と合格ラインを解説させていただきました。
なぜ難しいのかが分かれば対策もできます。
今後、このブログでは、社労士試験合格を目指す方に役立つ情報などを発信します。
一緒に社労士試験の合格を目指して頑張りましょう!
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