労災保険における障害補償
どのような場合に受け取れる?
労災保険における障害補償は、労働者が業務等を事由とする負傷または疾病にかかり、治ったときに、障害等級に該当する障害が残ってしまった場合に支給されます。
支給額を決める障害等級
労災保険に加入している人が業務上の事故等で障害を負った場合、労災保険によりその障害等級に応じて「障害補償等年金」または「障害補償等一時金」が支給されます。
障害の区分は、重い1級~軽い14級まであります。1級~7級までは「障害補償年金」が支給され、8級~14級までは「障害補償一時金」が支給されます。
なお、同一の事故による身体障害が2以上ある場合は、原則として重い方を全体の障害等級とします。
障害等級の併合繰上げ
労災保険の障害等級の併合繰上げは、同一の事故で13級以上の障害が2つ以上残った場合に適用されます。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- 第5級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき:重い方の等級を3級繰り上げます。例えば、第3級と第5級の2つの障害がある場合、全体として障害等級は第1級となります。
- 第8級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき:重い方の等級を2級繰り上げます。例えば、第6級、第8級、第8級の3つの障害がある場合、全体として障害等級は第4級となります。
- 第13級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき:重い方の等級を1級繰り上げます。例えば、第8級、第12級、第13級の3つの障害がある場合、全体として障害等級は第7級となります。
ただし、障害等級が第8級以下である場合において、各の身体障害の障害等級に応じる障害補償給付の額の合算額が、繰り上げた結果の身体障害の障害等級に応じる障害補償給付の額に満たないときは、その者に支給する障害補償給付の額は、合算額となります。
例えば、第9級と第13級の場合であり、繰上げの結果、等級は第8級になりますが、給付額は、第8級の503日分の額ではなく、第9級と第13級の給付額を合算した492日分の額を支給することになります。
補償額の計算
労災保険の障害補償は、障害等級に応じ、障害補償等年金または障害補償等一時金が支給されます。
給付基礎日額については以下の記事をご覧ください。
障害補償等年金(障害等級:第1級~第8級)
障害等級 | 補償額 |
---|---|
第1級 | 1年につき給付基礎日額の313日分 |
第2級 | 1年につき給付基礎日額の277日分 |
第3級 | 1年につき給付基礎日額の245日分 |
第4級 | 1年につき給付基礎日額の213日分 |
第5級 | 1年につき給付基礎日額の184日分 |
第6級 | 1年につき給付基礎日額の156日分 |
第7級 | 1年につき給付基礎日額の131日分 |
障害補償等年金を受給している方が就職をして賃金を得た場合も、年金額の減額や支給停止は行われません。
障害補償等一時金
障害等級 | 補償額 |
---|---|
第8級 | 給付基礎日額の503日分 |
第9級 | 給付基礎日額の391日分 |
第10級 | 給付基礎日額の302日分 |
第11級 | 給付基礎日額の223日分 |
第12級 | 給付基礎日額の156日分 |
第13級 | 給付基礎日額の101日分 |
第14級 | 給付基礎日額の56日分 |
加重と再発
加重
すでに身体障害がある場合に、業務上の事由等により負傷または疾病で同一部位の障害の程度を過重した場合は、差額支給がされます。
- 加重前後とも障害補償等年金:過重後の年金額ー過重前の年金額
- 加重前後とも障害補償等一時金:過重後の一時金-過重前の年金額
- 過重後に障害補償等年金:過重後の年金額-過重前の一時金の25分の1
再発
障害補償等年金の支給を受けている方の負傷または疾病が再発した場合は、障害補償等年金の支給が打ち切られます。
その間の療養期間中は療養等補償給付などの支給を受けることができます。
療養補償給付の詳細は以下の記事をご覧ください。
そして、再治癒後の障害の程度に応じ、障害補償等給を受けることができます。
障害補償の受け取り方
障害補償等年金前払一時金
障害補償等年金前払一時金は、一時的にまとまった資金が必要になる場合に、障害補償年金の受給権者が一定額の前払いを受けることができる制度です。
この制度は、障害等級に応じて定められた一定額の中から、受給権者が希望する額を選択できます。前払一時金が支給されると、障害(補償)年金は、各月分の合計額が、前払一時金の額に達するまでの間支給停止されます。
第1級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 800日分 | 1,000日分 | 1200日分 | 1340日分 |
第2級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 800日分 | 1,000日分 | 1190日分 | × |
第3級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 800日分 | 1,000日分 | 1050日分 | × |
第4級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 800日分 | 920日分 | × | × |
第5級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 790日分 | × | × | × |
第6級 | 200日分 | 400日分 | 600日分 | 670日分 | × | × | × |
第7級 | 200日分 | 400日分 | 560日分 | × | × | × | × |
手続き
請求の手続きは、原則として、障害(補償)給付の請求と同時に行わなければなりませんが、支給決定通知のあった日の翌日から1年を経過するまでであれば、請求することができます。
請求は、「障害補償年金・障害年金前払一時金請求書」を、所轄の労働基準監督署長に提出することになります。
請求は同一の事由につき、一回限りとなっています。
障害補償等年金差額一時金
障害補償等年金差額一時金は、障害補償年金の受給権者が死亡した場合に適用される制度です。すでに支給された障害補償年金と障害補償年金前払一時金の合計額が、障害等級に応じて定められている一定額に満たない場合、その差額を受給することができます。
これは、障害補償年金を受給して早くに亡くなった場合、受給額が少なくなってしまうため、障害補償年金前払一時金の限度額までは支給するものです。
受給資格者
障害補償等年金差額一時金の受給権者は次の通りです。
- 労働者の死亡当時、その者と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
- 上記以外の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
終わりに
このガイドを通じて、労災保険の障害補償等給付についての理解が深まったことを願っています。労働者として、私たちは自身の権利を理解し、必要なときにそれを行使することが重要です。
労災保険は、私たちが働く上での安全ネットであり、その中でも障害補償等給付は、予期せぬ事故が起きたときに私たちを支えてくれます。
しかし、その権利を最大限に活用するためには、その仕組みを理解することが不可欠です。
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